荒天下の航行
”船首破断”という恐ろしい言葉をご存じでしょうか?”スラミング”と”ホイッピング”の繰り返しにより、船首部分が破断する現象。1968年の「ぼりばあ丸」沈没などはこれによります。
荒天下での航海における問題(スラミング、ホイッピング)
今日では、気象衛星のおかげで、世界中のどの海域においても、台風の発生や天候の悪化を見逃すようなことはなくなり、気象情報の全てが船に行渡るようになりました。
しかし、それでも、たまたま洋上を航海中、近くに避難できる港がなかったり、航行スケジュールが差し迫ったりしていれば、船は大荒れの海上を走らなければなりません。
こんな時に、船は本来の進路とは関わりなく波に対して、常に船首を垂直に立てる必要があります。だが、この時に波浪が非常に大きくなると、波を乗り越えるたびに船首が海面を叩く「スラミング」という現象が生じ、さらに、これによって船体に強い振動が走る「ホイッピング」が起こります。これによって船首が破断して、沈没してしまった大型船もあります。
スラミングが限界までくると船首がもぎとられることもあります。
また、前方からの波が船首で砕けることなく、水の塊のままのしかかってくる「青波」も、甲板上の構造物を破壊し、船内に大量の水を流入させる。一方、波を船尾方向から受ける場合、波の速度と船の速度がほぼ一致すると船はさらに危険な状態になります。
どういうことかといいますと船が波の谷間へ滑り落ちる時、相対的に対水速度がゼロになった舵がまったく効かなくなり、波を真横から受けると共に遠心力で転覆にいたる「ブローチング」という現象が起きてしまいます。
船が大きな波の谷間を滑り降りる時に、波の速度が船と同じか、それ以上になると船は横波と受けた状態で急激に回頭し、遠心力で大きく横に傾斜します。
台風(ハリケーン)の中での航行の仕方
最近は台風9号、10号と話題となっていますが、恐ろしいのは航行している船もまた然りです。怖すぎますよね。
実際に海上における波浪と強風をもたらす気象の中でも最も恐ろしいのは台風。厳密には台風である。厳密には、台風とは北太平洋から南シナ海に発生するものと言い、インド洋のサイクロン、オーストラリア東方からメキシコ湾にかけて発生するハリケーンがありますが、内容は変わりません。
台風は目を中心に反時計回りに強風が吹き続け、波浪もそれに従って成長します。やむを得ず台風の中を航行しなければいけないときは必ず台風の西半分を通過するように舵をとります。
つまり、常に向かい風を受けるように進路を調整します。これはブローチングはある程度のスピードがなければ、起こらないからです。横波との同調も危険で、波浪が大きくても、向かい風の状態であれば、速度と舵をしっかり維持していれば転覆にいたることはありません。そこで、台風の西半分を「可航半径」と呼びます。ただし、台風の渦の巻き方は南北半球で異なるため、南半球では可航半径の向きは北半球とは逆になります。