この記事では、
- 1 海上輸送費と関連費用を説明します。
- 1.0.1 海上輸送費の三大要素
- 1.0.2 中国航路特有の費用
- 1.0.3 台湾と韓国特有の費用
- 1.0.4 北米方面特有の費用
- 1.0.5 運河系通行料金
- 1.0.6 その他、海上運賃に関連する費用
- 1.0.7 よくある疑問
- 1.0.8 まとめ
海上輸送費と関連費用を説明します。
貿易実務検定の本などを読んでいますと、貿易取引の輸送代金はインコタームズに基づいて、代金が支払われます。
最も一般的な条件である、「CIF」では海上輸送費用と保険料を輸出者が負担と書いてあると思います。自分もレストラン勤めで初めてクロアチアのワインを輸入した時に思ったのですが、(当時、現場のことはさっぱりわかりませんでした)輸入者側は輸送費用は一切かからないと思う方も多いと思います。
しかし、実際は、CIFであっても、輸入する側で「貨物を引き取るための諸費用」を支払います。コンテナ諸費用やサーチャージ(追加費用)と呼ばれるものです。
https://modric19.com/32-container-freight-day
まあ、レストラン勤めとかで輸入しようとする人も当然いるわけです。普段、料理とかワインとか提供して、船のサーチャージまで知ってるって中々の範疇外ですが、こういう人たちも結構、輸入していたりしますから、このチャージなんですか?なんて、問い合わせはたくさん来るわけですよね。船会社からすると当たり前だけど、世間からすると消費者に見えない保税地域のハンドリングチャージなんか??ってわけです。
海上輸送費の三大要素
国際輸送費は、下記、3種類の費用から構成されていますよ。
- 海上運賃
- サーチャージ(為替、燃料などのいわば調整費用ですね、最近だとWBSとか)
- 輸入国側のコンテナ取扱料金など*CFS(LCL)チャージも含みます。
海上輸送費の三大要素はさらに5つに分かれます。
費用の細かい表示は請求書を兼ねるA/N 「アライバルノーティス」にも記載されています。請求項目は、使用する船会社、航路などによりバラバラです。細かく記載されているところもあれば、ざっくりと「サーチャージ」だけで記載されているところもあります。細かい3文字アルファベットのチャージをたくさん記載してもトラブルになるだけですからねというのもわかります。
よくある物としては、BAF、YAS、THCなどがあります。いずれの費用も5つのいずれかに分類されます。
- 海上運賃(基本運賃
- 燃料系の割り増し料
- 為替的な割り増し料
- 危険回避の割り増し料
- 輸入港における作業料
1.海上運賃(オーシャンフレート)
船会社は、NVOCCまたは一般の荷主と「S/C」を結び、運賃の値引きをしています。S/Cとは、一定期間、一定の物量を輸送する約束した上で、輸送料金の値引きを得る仕組みです。いわゆるNVOCCや大口の荷主が結んでいることが多いです。
ですから、船腹をBOOKINGしようとするとNVOCCにBOOKINGして下さい。なんて言われたりします。NVOCCを経由した方が安く運賃を提供できるからなんですね。
つまり、当時のクロアチアワインの輸入のようにまあ、物量が少なく、年2,3回くらいのスポット的な輸送ほど、高い海上運賃を払うことにはなるわけです。はい。
当時、通関業者ももちろん使っていたわけですが、通関業者からは「船社立て替え金」などで表示されてこともありました。
海上運賃を負担する人:FOB→輸入者 CIFなど→輸出者
世界中の海上運賃を検索する方法
その他、ベースで割り増しになる要素
- 重量割り増し 一定の重さを超えると割り増し
- 長尺物割り増し 一定の長さを超えると割り増し。
疑問・海上運賃には消費税は発生するのか?
消費税は、かかりません。輸入許可前の貨物は外国貨物であるからです。
2.燃料系の割り増し料金(BAFなど)
上記のオーシャンフレートに追加される費用が「サーチャージ」です。その他、運行する航路によって、別のサーチャージを支払う場合があります。以下のサーチャージは、全て貨物を受け取る輸入者側が負担します。
料費の高騰があった場合に海上運賃に付けられる付加料金のことです。航空便の場合は『Fuel Surcharge』といったほうが一般的ですね。さらに航路によって異なる名称が使われることがあります。
EBS、ECR、BC、BAF、FAF、GBF、LSFS(海洋汚染の防止)、EFAFEなど。
2020年より新たなBunker Surchargeが
また、直近では国際海事機関(the International Maritime Organization : IMO)におけるMARPOL 条約に基づき船舶からの硫黄酸化物(SOx)排出量の規制が強化されました。
船舶燃料油の硫黄含有量の上限は 現在の 3.50%m/m から 0.50%m/m に引き下げられ、船舶からの硫黄酸化物の排出を削減することにより、地球環境へ負担の軽減するためにBunker Surchargeが導入されています。0.50%の低硫黄燃料の採用するためのコストある程度、顧客が負担するかたちになっています。
3.為替的な割り増し料(CAF・YASなど)
「○○港から○○港までは400USD」など、基本的に船の運賃はUSDで決められています。各国の船会社は、USドルから自国通貨へと切り替えて運賃を回収したいです。このとき、USドルと各国通貨との為替による収益の調整を行うのが「CAF」です。
他にYAS(円高による調整金)など
4.危険回避の割り増し料(ERSなど)
中近東を航行する際の危険回避に関わる費用負担です。
他にCSS(Carrier Security Surcharge)などがあります。
5.輸入港における作業料(THCなど)
輸入国側でかかる費用には、次の物があります。
- ターミナルハンドリングチャージ
- CFSチャージ
- 空コンテナ取扱料金
- DO発行費及び書類発行手数料
1.ターミナルハンドリングチャージ
コンテナターミナル内で発生する費用。CY内のガントリクレーンによる荷卸し費用、ターミナル内の輸送、その他、コンテナターミナルの維持・管理のための費用にあてられます。
2.CFSチャージ
コンテナフレイトステーション内で発生する費用。いわゆるLCL(混載輸送)で物を輸送してきたときに請求される。相場は、1M3=4000円前後
3.空コンテナ取扱料金(ECHC)
空コンテナを取り扱ったときに発生する費用
4.DO発行費及び書類発行手数料
D/Oは、貨物をコンテナターミナルや保税倉庫から引き取るための書類です。この書類の発行を受ける費用が「D/O費」です。その他、船が港に着いたことを知らせるアライバルノーティスの発行手数料が「DOC FEE」として請求されます。常識的に考えて、貨物の到着案内書類を有償で発行するなどありえないのですが….貿易業界ではまかり通っています。
書類発行時に請求される費用例
- D/O FEE=デリバリーオーダー(D/O)の手数料
- DOC FEE(B/L FEE)=B/Lを発行する手数料
中国航路特有の費用
- SPS=上海港の使用料金
- CRC=香港初アジア域内運賃にかかる割増金
- DCF=書類作成費用
- システムチャージ=中国からの輸入貨物に加算される。中国のフォワーダーが中国側の輸出者から取るべき費用を取らず、日本の輸入者から徴収する料金支払いを拒否すると、貨物の留置権を盾にして強引に支払わせようとする。関連記事:システムチャージとは?
台湾と韓国特有の費用
- KAC 台湾/基隆港から出す貨物に課される割増金
- CNTR TAX コンテナへの税金(韓国)
- Wharfage 埠頭使用料金(韓国)
北米方面特有の費用
- SPSC 北米向け海上運賃に適用される夏季割り増し運賃
- AMS 北米、EU向けの船積み、24時間ルール対応のための手続き費用
運河系通行料金
- STF スエズ運河を通過する費用
- PCS パナマ運河の通行料
その他、海上運賃に関連する費用
用語 | 意味 |
O/F | オーシャンフレイトの略=海上運賃。これにサーチャージが加わる |
AFR | 24時間ルールに対応するために海外で徴収される費用 |
ARB | 長尺物・重量物に加算される |
CIC | 中国路線に加算される費用 |
ACC | アラメダコリドチャージ ロングビーチ港を経由するときの負担金 |
ALL IN | 燃料割り増し系など、すべての加算費用を含めた価格 |
CFS | 混載輸送の方式 |
CIF | 輸出者が国際送料と保険料を支払う |
CFSチャージ | 船会社のCFSでデバンやバンニング、入出庫する費用 |
CMC | コンテナの修復に関する費用 |
COLLECT | 輸入者側が海上運賃を支払うこと |
CSS | セキュリティを高めるためのチャージ |
CUS | シャーシの使用料金 |
CSC | SOLAS条約のISPSコードの対応費用 |
DCF | 書類の作成費 |
DDC | コンテナ取扱料金=THC |
EMC | コンテナ自体の品質管理にともなうコスト |
ENS | 欧州版24時間ルールに関する費用 |
EPS | 使用済みのコンテナや空コンテナを移動する費用 |
GRI | 海上運賃を一括で値上げすること(海運同盟) |
IPI | 内陸国にある地点までを輸送することを指す。 |
WRS | 戦争地を通過するときの費用 |
S/C | 一定期間一定量の積み荷を保証すること=特別割引運賃 |
LSF | 燃料の硫黄分濃度排出規制にともなう費用 |
seal fee | コンテナに封をするための費用 |
VAT | 付加価値税 |
よくある疑問
1.海上運賃諸費用の課金単位は?
船が港に到着する間際に、船会社からアライバルノーティスが発行されます。
アライバルノーティスは、本船が輸入港に到着したことをお知らせする書類です。この中に、輸入者として支払うべき諸費用が書かれています。この費用を支払うと、船会社(代理店)からD/Oが発行されます。その後、無事に輸入許可を受けると、ターミナルに許可書とD/Oを差し入れて貨物を引き取ります。
アライバルノーティスには、請求額を示すに当たり「課金単位」を表示しています。課金単位には、次のものがあります。
名称 | 意味 |
B/L | 一つのB/Lに対して課金 |
RT | 一トンあたりに課金 |
VAN | 一つのコンテナに課金 |
20’DRY | 20フィートのドライコンテナ一本に課金 |
W/M または WM=レベニュートン | 実重量と容積重量を比較して、大きい方を採用 |
簡単!容積重量の計算ツール
2.海上運賃には消費税はかかる?
海上運賃には消費税はかかりません。消費税とは、国内貨物に対してかかる物であり、外国貨物にはかからないです。輸入品は、輸入の許可をもって、外国貨物から内国貨物へと切り替わります。海上運賃は、外国貨物に課金されているため、必然的に消費税は免税扱いです。
まとめ
- 輸送費=海上運賃+各種調整金+コンテナ輸送代金
- 各種調整金は、季節、航路、船会社により様々
- 貿易条件で、輸送費を輸出者負担になっていても、別途、日本側の費用が発生する
- 各種調整金の中には、意味不明な物もある。支払いを抵抗しても無駄に終わる可能性が高い。