各国税関で貨物情報確認の上でますます重要になってきていて、自分もトラブルネタとして冷や汗、動悸すら感じるHSコードについてです。HSコードは関税や貨物引取に深く関わるものなので、国際輸送を語る上で大切なものです。しかも、2019年になりTPPやEPAなどの自由貿易協定が発効され、原産地証明書を用意する必要性が今後さらに高まっています。原産地証明書の準備にHSコードが必要になってきます。
HSコードは4桁?8桁?どのように調べ、確認するか
「調べるハウツー」の前に…HSコードとは
HSコードとは「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description Coding System)に関する国際条約(HS条約)」に基づいて定められた番号のことです。世界における貿易の98%は、このHSコードを用いて行われており(すべての物に分類番号をつけて、わかるようにしています。約200の国と地域がHSコードを使用しており、日本語では「輸出入統計品目番号」、「関税番号」、「税番」などと呼ばれ、財務省が出す貿易統計などの輸出入に関わるデータはこのHSコードによる種類分けに基づいて統計が取られています。HSの分類改訂は、時代の流れに沿ってほぼ5年ごとに見直しされ、最新では2017年1月1日に改正されました。
HSコードをつける目的
その目的は、物品が何であるかを番号で特定することで関税を決めたり、規制品の判別を行ったり、輸出入許可を行ったり、統計を取ったりする等、国境をまたいで物のやり取りが行われる際には欠かせない情報となります。
このコードがないと、物品が何であるかを特定できませんが、貿易・商取引でやり取りされる物の数は種類が非常に多く、名称が完全に合致しないものも多くあることから、何らかの形でこれらの品物についても分類する必要があります。
HSコードの分類の仕方
HSコードは、全ての貿易対象品目を21の「部」(Section)に大分類し、6桁の数字で表し、これを号(Sub-heading)といいます。6桁のうち上2桁を類(Chapter)、類を含む上4桁を項(Heading)と呼ばれます。この6桁までは世界共通ですが、7桁目からは国別に定められた細分方法が使われます。日本ではこの6桁の号に「統計細分=下3桁」を加えた番号からなる9桁で定められています。最近ではNACCS(国際輸出入貨物に関する税関手続きの電子情報システム)用に第10桁目をつけることもあります。このようにHS条約加盟国は、国内法に基づいて「号」の下を細分化することができます。「号」の6桁はHS加盟国・準拠国が同じルールで分類するため各国共通です。そのため、現地語の関税率表から輸入税率を調べる場合、同一の番号であれば同一品目を示すことを踏まえると、現地語が分からなくても日本の関税率表のコードと対比させれば容易に関税率が判ります。
“HSコード”は使わない国も、また、別のコード体系もあります
HSコードは約160の国と地域で使われている一方で、HSコードを使わない貿易量が多い国もあります。例えばアメリカやブラジルなどです。それぞれアメリカではHTSコード、ブラジルではNCMコードという番号が振られ、他にも、ASEANではAHTNコード、EUではCNコードといった域内での関税同盟などを構築しているケースでは、域内で共通の関税分類番号を用いることあります。
HTSコード
アメリカの“HSコード”。HTSコードは(Harmonized Tariff Schedule)コードとは、国際的に統一されている関税システムを米国に適用する為につくられたものです。互換性はありません。HSコードの基本品目分類番号は6桁ですが、HTSではこれを4桁に変更し、この4桁の末尾に、2桁と4桁の拡張コードをつけて品目の確定を行っています。
NCMコード
MERCOSUR(メルコスール、南米南部共同市場)に加盟している国は、そのHSコードもMERCOSURと共通のものを使っています。ブラジルやMERCOSURではHSコードとは呼ばず、NCMコード(「Nomenclature Comum do MERCOSUL」の頭文字)と呼びます。メルコスールは関税同盟であるため、加盟国間では無関税で、加盟国外との貿易での関税率は、加盟国で統一して同じ税率にしています。関税の計算が非常に複雑、かつ高額であることも知られています。このNCMコードおよび関税に関しては、ブラジル連邦政府も関税シミュレータ(リンク)をウェブ上で公開していますので、どのような諸税が課せられるのか確認や計算に使うこともできます。ご自身で調べるなら、実際の輸入関税や諸税は現地の信頼できる通関ブローカー等を通じて確認するのがよいです。そして、ブラジルに輸出する場合はHSコードのかわりに使われているNCMコードを、輸出側でもインボイスに記載する必要があり、これが現地で品物のコードとしては認められないという話になると罰金や通関手続きの遅れを引き起こす恐れがあります。その他、輸入者側の納税者番号ともいわれるCNPJ番号もインボイスに記載しておく必要があるため、ブラジルへの輸出は現地の輸入側との密なコンタクトが必要です。
HSコードの調べ方
HSコードは日本関税協会のWebタリフで一覧を見ながら調べることができます。
HSコード一覧を調べても、目的の物品がどのカテゴリーなのかわからないこともあるかと思います。検索をしても出てこない、というときは、以下の点について再チェックすることをおすすめします。
- 製品としてHSコードの分類があるかどうか調べる。機械類、自動車部品、電気機器など大きなカテゴリーがある場合は、その中から探していく。
- 何かの部品や構成品の場合、完成品を探して、その部分品というHSコードを付与する方法もある。
- 製品としてぴったりくるものがない場合でも、大枠が同じならば、そのカテゴリー内に必ずある「その他」に分類されるHSコードを割り当てる。
- 機能・役割からみた製品分類がない場合は、素材に落とし込んでみていく。鉄鋼でできた何かの部品であれば、鉄鋼製品のカテゴリーといった具合に。
- 用語の言い換えをして検索する。HSコードは、実務上まったく使われていない用語で登録されていることもあります。名称は違うが同じ機能と役割を持つものが何かを考えながら探す。
物品がどのHSコードに該当するのか見つけることが出来ない場合
まず、その物品を表す「言葉」を複数候補使って検索してみることをおすすめします。業界で使われている一般的な名称や世間一般で使われていない言い方でHSコードとして登録されていることがあります。また、小文字の「っ」はすべて「つ」となりますので、通常の検索ではかからないことがあります。他にも「ゃ」は「や」に置き換わっており、小文字は正式な表記では使われていませんので、小文字の場合とそうではない場合との双方で探す必要があります。また古い表現・用語・辞書的な正確な言葉を使って検索することも試してみるとよいかもしれません。この製品名の「言い換え」のバリエーションをできるだけ多く試してみるとよいと思います。製品そのものがなくとも、それを含むより大きなカテゴリーがあることもありますので、製品を表す名詞がだめなら、それを含むより大きな括りを表すキーワードも試してみるとよいでしょう。
そもそも該当する項目がない場合
あまり貿易取引されることのないものや、全く新しいコンセプトのもの、ある国に固有のものの場合、HSコード自体に登録がない場合があります。この場合、近い製品のコードを選ぶことになりますが、実際の用途というよりは原材料・素材・構成物などで近いものを選ぶほうが見つかりやすいかもしれません。
- 複合材料など、複数のもので構成されていて、完成品(輸出品)の形でHSコードが設定されていない場合は、重量比で、もっとも多くを占めている材料・部材のHSコードを割り当てる。
- 複雑な機械や該当する製品がない場合、それが何をするためのものなのか「役割」と「機能」を見て、HSコードを割り当てる。
- 複数の要素が組み合わさっているが、完成品としてのコードが存在しない場合、もっとも大きな役割を果たしている部分、それがないと完成品としての役割がまったく果たせないような部位のHSコードを割り当てる。
- ユニットのように複数品から構成された部位も、そのユニットのメインとなる機能を持つ要素のHSコードを割り当てていく。
複数のHSコードに該当しそうで判別が付かない場合
会社の業務で輸出を行う場合などは、日頃お世話になっているフォーワーダーや乙仲に、以前に送った際に用いたHSコードを聞いてみるというのがよいかもしれません。ただ、HSコードを知る必要があるのはどちらかといえば、輸出をしたい会社側ではなく、そうした会社から通関業務などを引き受けている会社のほうが多いかもしれません。
あとは市場調査目的や輸出量などから競合や同業の動向を調べたりする場合は、どのHSコードで輸出されているのかという点をかなり調べる必要があります。関税の関係で、意図的にあるHSコードを用いているという場合もあるかもしれませんが、工業製品の場合、特にどのHSコードに該当するのか細目までわからないと統計や調査用途としては用いることが難しいといえます。同業者にそれとなく、海外へ輸出するときに用いるHSコードを聞いてみるとよいかもしれません。専門的な分野の場合、輸出している国名がわかると、あの会社が輸出したこの機械が何台輸出された、というような凡そのあたりがつけられることもあります。
また工業会などに加盟しているのであれば、事務局でこういう製品はどのHSコードなのかたずねると、把握されている場合もあります。
HSコードに登録されている物品は、加工されているかどうかや、特定の含有物の比率などによってもコード(番号)が変わってきますので、どういう条件で変わるのか、6桁分類のHSコード表を良く調べておくとよいでしょう。
税関に相談するという方法
物品をある国に輸出し、日本でつけたHSコードがその国の輸入申告時には違うHSコードとしてまったく違う税率を適用されることがあります。ある物品がどのHSコードなのか、についての最終判断は各国の税関にそれぞれ権限があります。したがって、前述のようなことは割りとよくおきます。
日本の税関も相談窓口を設けており、電話でも回答を受け付けてくれます。HSコードが何かわからないと取引に大きな支障がある場合や、想定していたHSコードと違うものが通関時に割り当てられてしまうと不都合がある場合などは、「事前教示制度」というのものを用いて、あらかじめ税関に書面でその物品がどのHSコードなのかを回答してもらっておくという方法もあります。これは国にもよりますが、書面で事前教示してもらうと、実際の通関のときにもその番号が尊重されるというルールをもつ国が多いため、関税額の減免を受けるFTA協定やEPA協定などを活用する場合や、HSコードによって税率が大きく変わってしまうような物品を輸出するときには利用するとよいでしょう。参考にしたい場合や、単純にHSコードの割り当てに関する考え方を知りたい場合などは電話による口頭相談でよいですが、こちらは回答内容に何ら拘束力がありませんので、あのとき電話でこのHSコードだと聞いた、という主張は通りません。
一番確実な方法は税関の「関税分類の事前教示制度」の利用
事前教示制度のやり方は以下の通りです。
詳しくは税関「輸出入通関手続きの便利な制度」をご覧ください。
また必要な文書は税関のHP関税法関係[C様式]に全てあります。
文書による事前教示の照会は「事前教示に関する照会書(C-1000号)」1通と見本などの参考となる資料(見本に代わる写真、図面等)を、輸入を予定している税関に提出します。あとは結果待ちです。原則30日以内に税関から「事前教示回答書(変更通知書兼用)」が送付されます。税関から回答した文書(事前教示回答書)の回答内容は3年間、評価申告及び輸入(納税)申告の審査の際に尊重されます。
Eメールによる照会に際しては、
Eメール本文に
- 照会日
- 照会者の氏名等の連絡先
- 輸出入者符号(ある場合)
- 貨物の名称、単価及び製造地
- 輸入予定官署
- 照会貨物に係る事前教示実績の有無及び類似貨物に係わる輸入実績の有無
- 照会貨物の説明(製法、性状、成分割合、構造、機能、用途、包装等)
- 照会者の関税率表適用上の所属区分等に関する意見の項目
- 架空の貨物に係る照会ではない旨
- 照会者及びその利害関係者が、照会する貨物について不服申立て又は訴訟中である等、関税率表適用上 所属区分等に係る紛争中である貨物に係る照会ではない旨
- 輸入申告中の貨物に係る照会ではない旨
- 輸入しようとする貨物の輸入者若しくは輸出者若しくは当該貨物の製法、性状等を把握している利害関係者又はこれらの代理人以外による照会ではない旨
を記載して下さい。原則として当輸入予定地を管轄している税関の事前教示用メールアドレスに送付することにより照会を行うことができます。一照会で一品に限られ、記載された連絡先メールアドレス宛てにメールで回答されます。
照会事項である関税率表適用上の所属区分等を決定するために必要があると思われる当該貨物の製法、性状、成分割合、構造、機能、用途、包装等について可能な限り入力します。もし製法、成分割合等の機密にかかる事項がある場合、セキュリティの問題がありますので、Eメールによる照会はできません。
なお、注意点としてはEメールによる事前教示は、口頭による事前教示と同じ取扱いとなり、輸入申告時の税関の審査において尊重されるものではありません。しかし、特定の手続きを踏むと文書での事前教示と同等の申請にすることができます
以上が手続きです。フォワーダーや通関業者が荷主の方に、輸送する貨物に関して色々お尋ねすることが多々ありますが、やはり手軽さを求めるならフォワーダーや通関業者に依頼するのが一番だと思います。お気軽にお問い合わせください。
HSコードの調べ方はTPPでは武器になる!?
冒頭でもお伝えしましたが、正確なHSコードがわかると自由貿易協定で使うことができます。TPPやEPAの特恵関税を利用するには特定原産地証明書が必要で、特定原産地証明書に記載するHSコードは、輸入相手国の6桁のHSコードです。TPP、EPAを利用する際に注意することは、品目コードの号=6桁までは世界共通であり、日本側で調べた品目コードと取引相手国が調べた品目コードの6桁が一致することが必要だということです。なので、日本で正確なHSコードを把握できることでEPAやTPPの恩恵をスムーズに受けられます。しかしながら、商品によっては品目分類の解釈が複雑で、お互いの国の品目分類が異なり品目コードが一致してない場合があります。すると商品が一致せず、特恵関税の利用ができなくなることがあるため、事前に相手国の輸出入者を通じて、品目コードが一致しているかどうか必ず確認することをお勧めします。
先述どおり、経済連携協定の原産地規則や関税率は最新版の2017版ではなく、協定締約時または交渉時のHSコードにより規定されます。
シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、アセアン、フィリピンとのEPAは2002年版
スイス、ベトナム、インド、ペルーとのEPAは2007年版
オーストラリア、モンゴルとのEPAは2012年版HSコードに基づいています。
日欧EPAやTPPなど自由貿易協定の発効がなされ、この関税撤廃の恩恵を受けるなら今後この原産地証明は必要になります。輸送依頼する貨物について一度ご自身で調べられるのもいいかもしれません。