税関の手続き、役割とコンテナ輸送に関わる条約

MSC

税関の役割

税関の役割というと密輸の取り締まりというちょっと警察、体育会みたいなイメージしか学生の時は想像できませんでしたが、海事関係の仕事をしてみるとその役割は非常に知的で全てカーゴクリアランスにゴーサインを出す非常に魅力的な仕事です。

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1.通関の意義

貿易は商品の国際間の移動であり、商品が制約を受けることなく、自由に行き来することが国際貿易の発展には望ましいですが、各国が自国の産業の保護、あるいはセキュリティー上の問題などから制限措置をとることはやむを得ないことです。

そこで、国内に入ってくる、あるいは国外に出ていく貨物は、国境線あるいは水際で関係法令に違反していないか、また、手続きに漏れがないかを税関でチェックを受けて、許可を得なければなりません。

このように所定の手続きを経て輸出入貨物が税関を通過することを通関といいます。すべての国では国境の要所に税関を要所を設置し、ここで通関手続きをとることを義務づけています。日本の場合陸手続きで接している隣国はないので、通関手続きはおもに外国貿易港、空港で行われるが、内陸地域のインランドデポなどにも税関出張所が設置されており、ここでも税関手続きが可能となっています。

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2.税関の仕事

輸出入される貨物の通関(通関行政)がひとつの大きな仕事

関税法では輸出入を行う人はその貨物について税関に申告しなければなりません。それに基づいて、税関は申告書類を審査して、必要に応じて検査します。

このような税関に対する輸出入手続きを通関手続きといいます。この際、食品衛生法(厚生労働省)、植物防疫法、家畜伝染予防法(動物検疫=ともに農林水産省)などの法律についても所定の手続きがとられているか確認しています。

保税地域の管理(保税業務)

関税法では輸出入される貨物は財務大臣が指定した指定保税地域か税関長が指定した保税地域に入れなければなりません。ここ入れた貨物は関税などの税金をかけられないまま、一時または長期の蔵置、加工、製造などができます。税関はこの保税地域を管理監督しています。

関税の徴収

輸入品に対して、特別な場合を除いて関税や消費税を徴収します。そのほか外国貿易に従事する船舶に対するトン税を徴収しています。関税は関税法、関税定率法、関税暫定措置法という法律で認められています。

税率については基本税率、暫定税率、特恵税率、協定税率、便益関税などがあります。税関で輸入品から徴収する関税、消費税は約5兆円に達します。

密輸の取り締まり(犯則事件の調査及び処分)

関税法違反事件については、税関で調査の上、検察官に告発するなどの処分を行っています。

関税法の趣旨及び、用語の定義

関税法は、簡単にいえば、関税の確定、納付、徴収および還付や貨物の輸出入についての関税手続きの適正な処理を図るため必要な事項を定めた規則です。

関税法ではそこで用いる用語を以下のように定義しています。

輸入とは

外国から日本に到着した貨物または輸出許可を受けた貨物を本邦に引き取ることをいいます。外国の船舶によって公海で捕獲された魚介類を日本の港で陸揚げしたものも輸入の範疇に入ります。

輸出とは

内国貨物を外国に向けて送り出すことをいう。

外国貨物とは

輸出の許可を受けた貨物及び、外国から本邦に到着した貨物で輸入許可がされる前のものをいいます。外国船が航海で漁獲した魚介類も外国貨物の範疇に入ります。

内国貨物とは

本邦にある貨物で外国貨物でないものおよび日本の船舶により公海で漁獲された魚介類もこの範疇に入ります。

外国貿易船とは

外国貿易のために日本と外国の往来をする船舶をいいます。

船用品とは

燃料、飲食物、その他の消耗品および帆布、綱、その他これらに類する貨物で船舶において使用する物品をいいます。

開港とは

貨物の輸出および輸入、外国貿易船の入港及び、出港その他の事情を勘案して政令で定める港をいいます。現在は120の開港と25の税関空港がありますよ。

不開港とは

港、空港、その他、これらの代わりに使用される場所で開港、税関空港以外のものをいいます。

コンテナ輸送に関する国際通関条約

各国の税関は関税の徴収、保税業務、通関業務、監視業務などを行っています。輸入されてきてコンテナに対して、通関、その他について厳しい態度で取締りをし過ぎると円滑なドアツードアを阻害して、国際複合一貫輸送の利益を減少させることになります。

特に欧州域内のように数カ国を経由した輸送の場合は国境を超えるたびに関税の徴収のために時間をロスしてしまいますよね。

このため、このような障害を排除して、海上コンテナを利用したスムーズな海、陸、一貫輸送の実現のために国際条約が結ばれました。その一つが「コンテナに関する通関条約」であり、前者はコンテナ貨物ではなく、コンテナそのものの通関条約、後者はコンテナに詰められた貨物の国際間道路輸送に関する国際条約で、いずれも国連欧州経済委員会が決めています。

コンテナに関する通関条約

英文でCustom Convention on Containers(CCC条約)。コンテナそのものを使用することによって生じる様々、障害を取り除くために作られた多国間のコンテナに関する通関条約です。日本では1971年に発効されています。まあ、普通考えますよね。

国境を接している欧州ではコンテナによる国際輸送が一般的ですが、各国の国境線を超えるたびに多大な時間と労力が発生してしまったので、これら障害を取り除いたわけですね。

一時輸入について

貨物を詰めて輸入された後に再輸出されたコンテナ、または空で輸入された後に貨物を詰めて再輸出されるコンテナについて免税、一時輸入という制度を設けています。このような関税、消費税の免税を受けて、一時輸入したコンテナを免税コンテナといいます。

2012年4月1日に「関税定率法等の一部を改正する法律」が施行されたことによって、免税コンテナにかかわる関税手続きが変更になりました。

免税コンテナは一定期間(従来は3か月でしたが、1年に延長されました)国内貨物と同様に制限はない。これを免税一時輸入の再輸出期間といいます。これはコンテナがコンテナ船で外国から輸入され、陸揚げされた場合に1年以内にその国から外国に向けて、船積み輸出すれば、その1年間は自由に制限なしでそのコンテナを使用できるというものです。

2012年の改正で経路、使用回数の制限も撤廃されて、事前申請も不要になりました。

損傷したコンテナなどで再輸出しないコンテナについてはそのコンテナは輸入されたものとみなされた、輸入税などが課せられます。コンテナの修理のために部品の免税一時輸入許可については、修理のための部品についても免税一時輸入されたコンテナと同様に扱うことになっています。

税関のシールをして行う運送に使用するコンテナの技術的要件および承認手続き

CCC条約では国際運送に使用できる条件のほかに技術的条件について定め、その技術的な条件を満たすコンテナの承認と識別のための承認証明書を規定しています。

これらの条件を備えたコンテナで国際運送を行えば、免税一時輸入などの便益を得ることができます。

CCC条約の中で「この条約の締結国はコンテナによる国際運送の発展を妨げる結果をもたらす恐れのある税関手続きを採用しないよう」要請しています。CCC条約に違反した者については当事国の国内法によって刑罰を科すことや、締結国の主権を尊重して、免税一時輸入の便益を撤回することもできます。

以上、コンテナに関する通関条約について簡単に執筆しましたが、これらはあくまでコンテナバン(容器)の取り扱いについての国際条約で、これと中身(貨物)の通関の取り扱いと混同しないようにしてください。