BL船荷証券は貨物の所有権のやり取りとするものであったと思いますが、B/Lの裏面を見ると見事に細かい字でいろいろ取り決めが記載されているんですね。それを約款と呼びます。どんな意味が記載されているのでしょうか?
- 1 B/Lの約款は約束事で船会社と荷主の責任を明確に
- 1.1 B/Lの役割をおさらい
- 1.2 何種類かある、B/L約款の世界の国際条約
- 1.3 日本国際海上物品運送法が約款のベースに!
- 1.3.1 国際海上物品運送法(海事六法より)
- 1.3.1.1 第一条:法律の趣旨や目的
- 1.3.1.2 第三条 運送人(船会社)の責任範囲
- 1.3.1.3 第四条 3条以外で運送人が責任を負わないパターン
- 1.3.1.4 第六条 船荷証券の交付と引き換えに対する注意事項
- 1.3.1.5 第十一条 危険品はしっかり申告する。無申告の物は廃棄してもよい!?
- 1.3.1.6 第十二条 運送人に損傷などが発生したときのクレームができる期間
- 1.3.1.7 第十二条の二 運送品の損害賠償の額の定義
- 1.3.1.8 第十三条 運送人が負う責任限度額を規定しています。
- 1.3.1.9 第十三条の3 一包または一単位の定義
- 1.3.1.10 第十三条の5 一包または一単位の「みなし定義」除外
- 1.3.1.11 第十四条 運送人に対する責任を追及できる期間
- 1.3.1.12 第十五条 この法律を無効にするための「特約」を設ける制限。
- 1.3.1 国際海上物品運送法(海事六法より)
- 1.4 実務上のB/L約款が適用される場合
B/Lの約款は約束事で船会社と荷主の責任を明確に
B/Lの約款には、英語で文章がこまかい字で整然と記載されています。それには船積みにおいて、事故が起きた時に補償や申し立てはどうなるのか?が記載されていますが、自分も全く読む気がしなかったので、これをB/Lの約款に内容についてまとめてみました。
B/Lの役割をおさらい
B/Lには4つの役割がありました。
① 運送契約の証拠:(運送の詳細や引き渡しの条件を明示)
② 貨物の受領書:(船会社が輸出者の貨物を受け取ったことを証明する)
③ 有価証券:(裏書きによって実質的に他者に貨物の所有権譲渡が可能)
④ 貨物の引取証:荷揚港で貨物を引き取るときに必要
B/L発行者(船会社やフォワーダー)は、これら4つの役割を定めるために、B/L表面と裏面に約款という形で契約条項を書き込んでいます。その内容は、B/L発行者と不特定多数の荷主との運送契約を定型化したものとなっています。
何種類かある、B/L約款の世界の国際条約
では、まず、約款制定の経緯を探ってみます。下記のように国際条約が世界では使用されています。日本は1968年のへーグ・ヴィスビー・ルールに基づいて約款が制定されています。
日本国際海上物品運送法が約款のベースに!
1924年8月24日、「船荷証券統一条約」(船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約)、いわゆるヘーグ・ルールが成立し、主要海運国はそれに対応する国内法を制定しました。
その後1968年2月23日、ヘーグ・ルールの改正議定書(the bl、ヘーグ・ヴィスビー・ルール)が制定されました。日本はは1992年3月13日に同議定書に署名し、6月1日に旧条約の廃棄を通告してこの新しい国際条約を批准しました。
また、同年6月3日にこのヘーグ・ヴィスビー・ルールを「国際海上物品運送法」に反映するため、「国際海上物品運送法の一部を改正する法律」が公布され、1993年6月1日、改正国際海上物品運送法が施行されました
日本ではヘーグ・ヴィスビー・ルールを基にした国際海上物品運送法が1957年に施行され、日本国内・日本企業のB/L約款のベースになっていることが多いです。
B/L約款では基本的には用語の定義に始まり、荷主と船会社の責任範囲についてが書かれてあります。例えば、危険品・禁制品を荷主が法律・規則・条約を守らずに船会社に渡した場合、船会社が処分でき、荷主が損失を負担するといったことです。以下、約款の根幹となる重要な条文をまとめました。
国際海上物品運送法(海事六法より)
第一条:法律の趣旨や目的
船積地や陸揚げ港が「本邦外」を指定していますので、内航船には適用されずに、日本と海外(外国)を往来する船に適用されます。
第三条 運送人(船会社)の責任範囲
運送人がどのような場合に賠償責任を負うのか負わないのかが書いてあります。
賠償責任を負うパターン
自己の使用する者が運送品の受け取り、船積み、積みつけ、運送、保管、荷揚げ、引き渡しのときに損傷や滅失したとき
賠償責任を負わないパターン
船長、海員など、運送人の使用するものの「航行」に起因する行為、または火災により生じた損害
第四条 3条以外で運送人が責任を負わないパターン
- 海上における特有の危険
- 天災
- 戦争や暴動
- 海賊
- 裁判上の差押え、検疫上の責任
- 荷送り人や運送品の所有者の行為
- ストライキなどに起因する損害
- 海上における人命や財産の救助(共同海損)
- 運送品の特殊な性質
- 運送人の荷造の不完全 ケースマークの不備
- クレーンの欠陥
第六条 船荷証券の交付と引き換えに対する注意事項
運送人は、荷送人に対して、「このタイミングで船荷証券を発行する」また、荷送り人は「船荷証券がないと貨物を引き取れない」などの注意事項が記載されています。
第十一条 危険品はしっかり申告する。無申告の物は廃棄してもよい!?
これは、危険品の申告の重要性を改めて思い起こされますね。運送人は、引火性や爆発物等、危険を知らずに積載した時はいつでも、捨てて、無害化する権利があります。危険品であることを隠していた場合はいつ廃棄されても荷主は文句はいえません。
第十二条 運送人に損傷などが発生したときのクレームができる期間
運送人の輸送により、貨物に対して、何らかの損傷が発生したときの対処方法
- クレームをいれるタイミング:運送品を受け取ったとき又は、受け取り日から三日以内
- 方法:よくある、クレームノーティスですね。貨物の損失または、損傷状態を書面にして通知
第十二条の二 運送品の損害賠償の額の定義
第十三条 運送人が負う責任限度額を規定しています。
第十三条の3 一包または一単位の定義
第十三条の5 一包または一単位の「みなし定義」除外
第十四条 運送人に対する責任を追及できる期間
第十五条 この法律を無効にするための「特約」を設ける制限。
直近では、平成30年に、「危険物の運送を委託する荷送人は,運送人に対し,その安全な運送に必要な情報を通知する義務を負うとの規定や,運送品の滅失等についての運送人の責任は,その引渡しの日から1年以内に裁判上の請求がされないときは消滅するとの規定を設けるなど,運送全般に関する規定の整備を行うこととしています」(『商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律について』)http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00219.html
という改正がされています。
この危険物の運送に関しては、弊社のwaybillには12.DANGEROUS GOODS AND CONTRABAND に記載があります。
このようにどの会社のB/Lを見ても危険物運送の条項を見つけることができます。
実務上のB/L約款が適用される場合
貿易実務において約款の条項が適用される場合は、上記のように不測の事態が起こった時です。
例えば、運送途中で貨物にダメージがあった時です。水濡れや破損、荷崩れなどです。
貨物のダメージについて、運送契約を結んでいるため、荷主は船会社に対しての損害賠償請求はもちろん可能です。しかし、B/Lの約款には、荷主に立証責任を課している条項が必ず記載があるため、どう処理するかが論点となります。
ダメージが見つかった場合は、船会社に対して引き渡し後3日以内に予備クレーム(Notice of Claim)を行わなければならないということもB/Lの約款に記載があります。その後、本クレーム(Final Claim)を行わならければなりません。日本では、引き渡し後、請求期限は1年以内となっています。
クレーム処理は国や船会社によって異なるため、運送契約を行う際はしっかりと把握して、適切に行う必要があります。クレームは船をブッキングした会社が行うため、実際には通常はフォワーダーを介してクレームを行われます。
また、船会社側が過失を認めた場合に請求できる金額についても、約款に記載があります。
ヘーグ・ヴィスビー・ルールでは、1梱包もしくは1単位あたり666.67SDRまたは総重量1kgにつき2SDRのいずれか高い方となっています。そのため、日本やヘーグ・ヴィスビー・ルールに批准している国のB/Lの約款には上記の金額がB/Lの約款に記載があります。
SDRとは国際通貨基金(IMF)が定めた特別引出権(Special Drawing Rights)のことです。具体的には2019年12月21日時点では151円/SDRです。
B/Lの約款は英文で細かく書かれていますが、基本的には国際条約に基づいて画一的な内容が記載されています。難しく考える必要はなく、運送会社との契約でどのような事項があるか、把握していれば問題はありません。
ONE:B/L約款
https://jp.one-line.com/ja/standard-page/b/l-terms
郵船ロジスティクス:約款
https://www.yusen-logistics.com/jp/japan/support-information/terms-and-conditions