こんばんは。海事代理士のらきてぃっちです。
[本記事のターゲット]
「輸出」「積み戻し」「再輸出」の違い
貿易の仕事をしていると、よくこの貨物はShip Backです。なんて、話しがよくあります。これ、よく分からないんですよね。何故かというとシップバックは、時に「積み戻し」のことを指し、時に「再輸出」のことを指すからなんです。
「輸出」という言葉を“外国に貨物を送る”という意味で使うことが多く、一度輸入した貨物の再輸出であっても、会話では輸出と言ってしまい、厳密な意味を言い表せていないこともあります。
▼ 輸出、積み戻し、再輸出の定義
- 輸出=内国貨物を外国に向けて送り出すこと。関税法第2条第1項第2号
- 積み戻し=外国貨物を外国を向けて送り出すこと。関税法第75条
※貿易現場では「シップバック」とも言われる。
※輸入通関前の保税地域にある状態の貨物を外国貨物という。
※法律上は「積戻し」と表記される。
- 再輸出=輸入した貨物を再び外国に向けて送り出すこと。輸入通関した“内国貨物”を原形のまま再び輸出される場合と、保税地域などで、修繕や加工を施されて再び輸出される場合がある。
(関税定率法第20条ほか)※再輸出には、内国貨物、外国貨物の両方のケースがある。
※輸入通関した“内国貨物”を原形のまま再び輸出される場合を「シップバック」とも言われる。
実は「積み戻しと輸出の違い」「2つのシップバック(積み戻しと再輸出)の違い」については、ややこしい内容なのですが大切な定義
輸出者に貨物を返却する「シップバックする(積み戻し)」手続き
そもそも、どんな事情で貨物を「シップバック」するのか?
日本でも欠陥商品を受け取ったとき、会社でも、個人でも、返品しますよね。貿易取引においても、しばしば色々な事情で返品ならぬ返送することがあります。それが「シップバック」です。
これが結構、面倒なんですよね。BLを向け地逆に作り直したり、当然、ShipperとConsigneeを逆に作り直したり、もう、交渉のやり取り見ているだけで、大変です。なんせ、お互い現場に居合わせていないですからね、できる限りこういう難しいケースをメールでやりとりしていると何日もズラ~とメールができてしまいます。
ちなみに、輸出者が輸入者に船や飛行機などで送った(Ship)した貨物を返送するので「シップバック(Ship back)」と呼ばれますが、実は「シップバック」は貿易実務の現場での通称であり、法律上は「積み戻し」といいます。
では、「シップバック(積み戻し)」はどんなときに行われるのでしょうか?
輸出者と輸入者がお金をかけて輸送した貨物ですから、シップバックすることは業務的にも金銭的にも損失・損害があります。ですが、輸送中に商品が壊れてしまい使いものにならないことがわかっているとき、塗料などの成分検査や食品検査などで基準をクリアできないとき、はたまた、法律上、商品を取り扱う許可が必要なものなのに輸入者がその承認を受けていないときなどに、シップバックしたりします。ライセンスが切れているとかよくありますね。その際に早く決済しないとデマレージ(貨物の保管料)がどんどん増えていってしまいます。
輸入できるけれど品価値がないとき、理由があって、輸入許可が下りないときに「シップバック」するというわけなんですね。
※輸入許可が下りない商品はシップバックするか、廃棄するかのどちらかになります。
「シップバック(積み戻し)」手続き
最輸入者は自社だけで判断せず、輸出者と話し合って「シップバック」の合意を得ることが必要だということ。そもそも輸入者も輸出者も売買することを前提に契約を結んでいるので、輸入者は輸出者に輸入できない理由を説明する責任もありますし、その貨物の支払いやシップバックにまつわる費用(どちらが負担するのか)について交渉する必要もあります。これが長いんです。
輸出者もシップバックされた貨物を受け入れる体制ができていなければ、返送しても再び返送される可能性もありますからね。当然、合意のもとで行われますよ。
その上で、シップバックすることが確定したら、(フォワーダーに依頼して)船を手配し、税関に積み戻しの申告を行います。
積み戻しの申告は、輸出申告に準じる形式で行われ、もとの輸入者は輸出者となり、インボイスやパッキングリストなど必要書類を作成します。
※輸入者が輸出者から入手した船積書類では通関できません。入手した書類をもとに、輸入者は、輸出者に向けて立場を逆転させた書類を作成する必要があります。これが、さきほど書いた、船会社がBLやマニフェスト(積荷目録)を逆に作成することです。
税関による書類審査、現物検査があるときもありますね。積み戻し許可が下りたら、船・飛行機などで貨物を現地に送り返します。
これで輸入者の「シップバック(積み戻し)」業務は完了となりますが、商品によっては、輸出時には問題なくても輸入時には規制があって、現地(もともとの輸出地)の通関手続きがスムーズにいかないケースもあります!!ShipperとConsigneeは、商品をきちんとシップバックできるのかについても事前に話し合って置く必要もあります。
「シップバック」は、輸出者にとっても輸入者にとっても、手間も費用もかかってデメリットしかありません。実際に起きてしまったら、なるべく長引かせず、おたがいに譲るところは譲り合って解決を図るしかないのです。