こんにちは。海事代理士のらきてぃっちです。
危険物輸送
爆発物、毒物などの危険物はその取扱いを誤ると人命や財産に直接危害を加えるだけでなく、環境汚染により社会的に重大な影響を及ぼす恐れもあるので、これらの危険物は容器、輸送、貯蔵などについて様々な規制が定められている。
IMDG code
危険物の海上輸送については、それぞれの国が自国の規制で独自に規制すると円滑な輸送を妨げ、危険度も増すため、国際海事機構(IMO)が国連勧告を受けて、世界的な統一規制として、International Maritime Dangerous Goods Code(IMDG Code,国際海上危険物規程)を1965年に採択しました。
2004年1月からはSOLAS条約(国際海上人命安全条約)のもとで一部の規定を除き、義務付けられ、世界共通の危険物取扱基準となっています。わが国の「危険物船舶運送及び、貯蔵規則」もごく一部の内容を除いて、IMDG Codeを採用した内容となっています。
IMDG codeは危険物を容器に入れ、包装して定期船輸送する場合に適用される規則ですが、そのほかコンテナ輸送にはあてはまらないものの、危険物のばら積み輸送についても輸送基準を定めており、個体についてはBC Code,液体についてIBC Code、危険化学薬品のばら積み輸送のための船舶構造および、設備の関する国際規制、液化ガスについてはIGC Code(International Code for the Construction and Equipment of Ships Carrying Liquefied Gases in Bulk 液化ガスのばら積み船舶の構造および設備に関する国際規則)がそれぞれ定められていますよ。
危険物船舶運送及び、貯蔵規則
IMDG CODEは危険物質をその性質に基づいて9分類していますが、日本も危険物船舶運送及び、貯蔵規則もこれを全面的に取り入れて、次のように定義、分類されています。
- 火薬類(IMDG CodeのClass 1):火薬、爆薬、加工品など爆発性を有する物質です。
- 高圧ガス(IMDG CodeのClass 2):50℃で圧力0.3メガパスカルを超える蒸気圧を持つ物質、または、20℃、圧力0.1013メガパスカルで気体となる物質。
- 引火性液体(IMDG CodeのClass 3)燃える液体で、低引火点(マイナス18℃未満)、っ中引火点(マイナス18℃~23℃未満)、高引火点(23℃以上~61℃以下)の3種類に分かれる。引火点23℃がベースでそれ未満のものは検査が必要になる。
- 可燃性物質(IMDG CodeのClass 4):アルミニウム粉、金属粉、セルロイドなどの粉体、粉末になると燃えやすくなり、危険な物質です。
- 酸化性物質(IMDG CodeのClass 5)の硝酸アルミなど酸化するもので、変化すると劇物になるものもあります。
- 毒物類(IMDG Code のClass 6):人体に毒作用を及ぼす物質、病原体を含む物質。
- 放射性物質(IMDG CodeのClass 7)輸出物質にはないが、輸入でカーボンやヨウ素に付着されて輸入されています。病院などで使用されますが、一般的にはなじみがありません。
- 腐食性物質(IMDG CodeのClass 8):酢酸、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸など。アセトン、トルエンなど身の回りにあるものも含まれます。日本では、毒物、劇物と同じ法令で規制されています。
- 有害性物質(IMDG CodeのClass 9)人体や環境に悪影響を及ぼすもので、液化ガス、液体化学薬品など
その他の危険物に関する規則
港則法:「危険物船舶運送及び、貯蔵規則」に定められた危険物のうち、港内における船舶の安全運航のために規制を必要をする物質を運搬している船舶の入港、移動、停泊場所、荷役などを規制します。
消防法:コンテナヤードにおける危険物の貯蔵、取り扱いには消防法が適用されます。一定の条件を満たせば、所轄の消防署の許可を得て、10日間の仮貯蔵が認められます。
高圧ガス保安法:高圧ガス保安法:高圧ガス取り扱い、貯蔵、陸送を規制します。コンテナターミナルやCFSには貯蔵できず、通過貨物として、取り扱われ、直積み、直渡しとなります。毒物及び、劇物取締法:規制対象物の輸送、貯蔵には技術上の基準が規定されています。コンテナターミナルやCFSでの一時的な蔵置に営業登録は必要ありません。
火薬類取締法:この法律の対象となる火薬類は都道府県知事の許可を得た火薬類でなければ、蔵置できず、ターミナルでは通過貨物として直積み、直渡しとなる。
毒物及び、劇物取締法:規制対象物の輸送、貯蔵には技術上の基準が規定されています。コンテナターミナルやCFSでの一時的な蔵置に営業登録は必要ありません。
危険物輸送に関する欧米の規則
米国
米運輸省の危険物規則は海上輸送に関するIMDG,航空輸送や国際民間航空機の規則、そのほか、ばら積みに関する国際基準を取り入れているため、海上、航空輸送の場合は支障がないが、国内の陸上輸送では、荷主に24時間いつでも応答できる緊急連絡先を記した書類の携帯を義務づけています。
このために米国に危険品を輸出する際には、米国科学委員会が緊急時対応のために設立した団体に製品を登録しなければなりません。登録することによって、荷主は連邦政府、州政府、および地方自治体に対して、流出物や環境放出の規制報告サービスを提供する第三者機関にアクセスできます。
ここは24時間体制というコミュニケーションセンターで、訓練された専門家が危険物運送事故の第一応答者に技術支援と緊急情報を提供することになっています。
アメリカ(米国)では危険品規則違反には、最大1万5千㌦…という莫大な罰金が科せられ、さらに積み荷の留置などでデマレージ、ディテンションなどがかかるという最悪な事態を招きやすいので、要注意です。
欧州
危険物の道路輸送については国連欧州経済委員会が国連勧告に基づいて策定した欧州危険物国際道路輸送協定が基準となっており、分類、容器、表示、標札など危険物輸送の基本要件が規定されています。
鉄道輸送に関しては国際鉄道運送中央事務局の専門委員会が策定した欧州危険物国際鉄道規則が輸送基準となっています。
コンテナによる危険物輸送
危険物も原則としてはコンテナ化して、運送できますが、危険物の個品に対する容器、包装、ラベル、表示などは危規則で禁止されている危険物はコンテナ化しても運送できません。
危規則でいう「コンテナ」とは、「側面が閉囲された構造のもので、容積1立方メートル以上のもの」をいいます。放射性物質などに輸送する場合、コンテナは非開放の構造を持つコンテナでなければなりません。
危険物で収納したコンテナには、中に詰め込んだ危険物に対応する標札を4側面の見やすい位置に、また、同一品名だけを一つコンテナに収納する場合は、その危険物の国連番号を定められた方法によって表示しなければなりません。
100℃以上の液体または240℃以上の個体の危険物が格納されたコンテナには「高温注意副標札」を4側面に、コンテナ内の貨物を燻蒸した場合は「燻蒸注意用副標札」をコンテナの扉に表示します。
危険物輸送の手続きの荷送人の義務
荷送り人は危険物のコンテナ運送する場合は、運送の安全を期すために、あらかじめ品名、数量などをコンテナ危険物明細書に記載し、船舶所有者または船長に提出しなければなりません。さらに、容器、包装、ラベル、表示、収納方法および、コンテナの表示がそれぞれの規定に適合して運送に適した状態であることを危険物明細書に明記して、証明しなければなりません。
とくにアメリカ(米国)向けの場合は24時間持続可能な緊急連絡先の電話番号を必ず記載しなければなりません。連絡先が日本を含むアメリカ(米国以外)の場合、国番号の前に必ず国際識別番号である”011”を明記しなければなりません。(例えば、東京の場合は011‐81‐3ー1234‐5678)のようになります。
また、品名(proper shipping name)にN.O.Sが付く場合は、必ず主成分名を記載します。N.O.Sが付かない場合でも、当該品目がIMDG Code のSpecial Provision274の適用を受ける場合は主成分が必要となります。
危険物輸送のおける収納検査
荷送り人は以下の危険物をコンテナに詰める場合は、船積み前に国土交通大臣から認定された日本海事検定あるいは新日本検定協会による収納検査を受けなければなりません。ただし、日本以外の場所でコンテナ詰めする場合は検査は必要ありません。
収納検査が必要な危険物
クラス1 火薬類
1.1 大量爆発(ほぼ瞬間的にほとんど全ての貨物に影響が及ぶ爆発)の危険性がある物質及び火工品
1.2 大量の爆発物の危険性がなく、かつ飛散の危険性がある物質及び火工品
1.3 大量爆発の危険性はないが、火災の危険性があり、かつ弱い爆風の危険性もしくは弱い飛散の危険性、またはその両方の危険性がある物質、および火工品(大量の輻射熱を放出するもの、および弱い爆風の危険性、もしくは弱い飛散の危険性、またはその両方を発生しながら次から次へと燃焼が継続するものも含みます)
1.4 高い危険性が認められない物質、または火工品(点火、または起爆が起きた場合にその影響が容器内に限られ、かつ、大きな破片が飛散しないものを含む)
1.5 大量爆発の危険性はありますが、非常に鈍感な物質
1.6 大量爆発の危険性がなく、かつ、極めて鈍感な火工品
クラス2 高圧ガス
2.1 引火性高圧ガス
2.2 非引火性非毒性ガス
2.3 毒性高圧ガス
クラス3 引火性液体類
3.引火点摂氏23度未満のもの
クラス 4 可燃性物質類
4.1 可燃物質類。可燃性を有する
4.2 自然発火性物質。自然発火を有する
4.3 水反応可燃性物質。水反応可燃性を有する
クラス 5 酸化性物質
5.2 有機過酸化物。有機過酸化物としての危険性を有する
クラス 6 毒物類
6.1 容器等級がI、またはIIの液体、または気体
クラス 7 放射性物質
放射性物質
クラス 8 腐食性物質
副次危険性として引火性(Class 3)、または毒性(Class 6.1)を有するもの
クラス 9 その他の有害性物質
その他の有害性物質
コンテナへの収納
荷送人は危険物を詰めるコンテナが十分清掃されていることが事前に確認し、危険物の移動、転倒、衝撃、摩擦、圧壊などにより危険が生ずる恐れがないように積みつけなければなりません。
品物が異なる危険品または危険物を非危険品との混載は、それらが相互に作用して発熱、腐食作用などの危険な科学的作用を引き起こす可能性がある場合は認められません。
危険物の混載
危険物の中には接触すると相互に反応して、発熱やガスの発生、腐食などの科学的作用を引き起こすなどの危険を伴う場合があるので、危険物船舶運送及び、貯蔵規則では
1)同一の船舶に分類または項目の異なる危険物を積載する場合は、危険物相互については、火薬類の隔離区分に従って隔離することと義務づけています。
このため、混載の対象としてフォワーダーが取り扱い品目は、IMDG code 3(引火性液体類)/ Class 6 (毒物)/ Class 8(腐食性物質)/Class 9(有害性物質)に限定されています。
危険物の混載は従来からフォワーダーの手で行われ、最近ではアジア中心にサービスが広がっています。危険品と一般貨物を同一コンテナに合い積みするのが一般的ですが、一般貨物を同じコンテナに危険品を詰めると一般貨物への悪影響も考えられるために、最近では荷主サイドから”専用混載”の要望が強まっていて、専用混載便を仕立てるフォワーダーやNVOCCも増えています。
冷凍貨物のコンテナ輸送
リーファーコンテナ「冷凍」とは青果物、畜肉、魚介類などの食材あるいはそれらを加工した食品を氷点下の温度に冷却して、凍結状態にすることをいいます。常温以下の低温で凍結させずに微生物の生育や化学変化を抑えて貯蔵することを「冷蔵」といいます。低温や凍結の状態では、生物活性の低い状態となり、化学変化や微生物・細菌の増殖や酵素活性が抑えられ、腐敗の進行も著しく抑えられます。このため鮮度の低下を遅らせ、新鮮な状態が維持されやすくなります。
貿易を輸送システムの発展により多種多様の食品の国際的流通が活発なり消費者の嗜好の高まりとともに生産地から消費地へ商品の鮮度や品質を維持しながら、輸送することが求められるようになり、冷蔵、冷凍輸送への需要は著しく伸びています。
現在では食品にとどまらずに、切り花、球根、フィルムなどの化学品、血しょうなどの医薬品の温度、湿度、空気組成を一定に保ちながら生産地あるいは工場から消費地までリーファコンテナで運ばれています。
リーファーコンテナには冷凍機が取り付けられ、冷凍機の運転には電力が必要なので、冷凍コンテナには電源プラグがつけられています。
コンテナ内は冷凍機で作り出された空気が循環して、低温を保つように設計されており、貨物の種類によって通常+20C~-20℃の間の任意の温度にセットすることができます。冷却装置への電力供給は海上輸送中は本船から、港湾ではターミナルの電源を使用しています。トラック輸送ではコンテナまたはシャシーに電源ユニットを取り付けます。
冷凍貨物の輸送
冷凍、冷蔵貨物の輸送ではコンテナに積み込む前の取り扱いが目的地における受け取り時点での貨物の状態を左右するため、事前の処置が必要になります。航海中の設定温度、湿度、換気が適切されていたとしても、コンテナに積み込む前の取り扱いが間違っていれば、適切な状態で顧客に届けることはできません。
貨物の予冷は商品寿命に影響するので、コンテナに積み込む前にその商品に合った設定温度に事前に冷やしておく必要があります。
リーファーコンテナは決して、冷却設備ではありません。予冷された貨物の温度を維持するように設計されており、温度を下げる機能はありません。コンテナの性能を最大限、発揮させるためには、コンテナに合った方法で使用しなければなりません。
貨物が設定温度よりも高い状態でコンテナに積み込まれると、冷凍機の過負荷で故障の原因になることもあります。肉類、魚介類など低温での輸送が求められる貨物でもっとも注意が必要なことは水分損失で、これによる萎縮は5パーセント以上にもなります。このため適切な梱包で水分の損失を抑えることができるだけで、梱包は水分の損失から食品を守るだけではなく、落下や傷による損傷、汚染も防ぐことができます。
コンテナ内での貨物の積み付けは空気の流れに直接的に影響を与えるので、コンテナの床面全体を貨物で敷き詰め、高さは上限の赤線を越えないように詰めます。適切に積み付けられた場合、冷気が貨物全体に流れ、カートンを覆い、コンテナの内壁を通して、コンテナ内に侵入した熱を取り除くことができるのです。これで、コンテナ内は一定の温度に保たれます。コンテナが正しい温度、湿度、換気に設定されているかは、積み込み前、あるいは積み込み中に必ず確認する必要があります。
青果物の輸送
青果物のような冷蔵輸送では温度管理、換気、積載時のハンドリングとともに、商品の呼吸、水分の損失、エチレンガスの放出、熟成など商品固有の特徴を把握することも大切となります。
野菜や果物は収穫後も生きており、呼吸しています。酵素を吸って、炭酸ガスやエチレンガスを放出、発熱して、水分を放出して、徐々に鮮度が落ちていきます。冷蔵するということは収穫から商品価値を失うまでの商品寿命を延ばすことだといえます。温度を下げることによって、呼吸と熱の発生をかなり抑えることができるので、温度は商品価値を保つ上で重要な要素となります。
温度も果物や野菜を保存する上で欠かせない要素で、水分の損失で重量が軽くなったり、萎縮、形くずれで栄養価が失われると商品価値がなくなってしまいます。商品を0℃前後に予冷し、コンテナ内を4℃~5℃に設定しておくと、水分損失は半減できます。
このように呼吸することによって、炭酸ガスとエチレンを放出しますが、エチレンは自然な老化と熟成を調整する機能を持っています。これがないと適正な熟成ができず、商品としての価値がなくなりますが、保冷中や輸送中に老化や熟成が早まるとキュウリや葉菜のグリーンを失わせて、レタスにサビ色を付けたり、ニンジンに苦みを与えたりします。
エチレンの放出量が多いのは、リンゴ、桃、アボガド、メロン、梨などの生鮮果実で、これらの商品とブロッコリー、バナナ、マンゴーのようなエチレンに敏感な商品を数時間以上同じ場所に保管しなければなりません。精密な温度管理ができるリーファーコンテナは“実バエ”(かんきつ類や瓜、りんごなどの青果物に卵を産み付けるハエ)とその幼虫を根絶するため、植物検疫前となる輸送中に低温を維持するコールドトリートメントも可能です。
リーファーコンテナの革新”CA輸送”(Controlled atmosphere)
CAといってもCABIN ATTENDANTではありません。リーファーコンテナにおける”CA”輸送は”Controlled atmoshere”というものです。あるいま”MA”輸送。”Modified atmoshere”と呼ばれ、生鮮品輸送で需要が高まっています。
コンテナ内部の空気組成を変えることは商品の寿命を延ばすだけではなく、バクテリアの減菌ができるため、青果物だけではなく、冷蔵輸送される畜肉、魚介類などにも利用されています。
例えば、りんごはコンテナ内温度を0℃、湿度を92%に設定して、酸素濃度を3%、炭酸ガス2~2.5%、窒素を94.5%の呼吸に抑えた冬眠状態で保冷・輸送すると収穫後半年もつを言われています。CA方式の採用によって、従来は航空機のみで輸送されていたサクランボ、マンゴー、アボガドなどの商品がコンテナによる安価な海上輸送に切り替えられ、市場価値を得ています。CA輸送はコントローラーで設定したガス濃度を調整して輸送するのに対して、MA輸送はコントローラーがないため、O2,CO2を濃度を調整できません。CA輸送、MA輸送に使用する冷凍コンテナは通常の冷凍コンテナより漏曳度が30分の1の高気密が要求されます。”CA”で使用する弁当箱大のコントローラーは米国TransFresh社が特許を持ち、使用するたびに同社から借り受けます。この輸送法は厳密は温度管理が要求されるので、冷蔵輸送の補助的手段として取り入れることが望ましいです。
超低温輸送用コンテナもあります。
一般的なリーファーコンテナが維持できる低温はマイナス18℃~30℃です。米国の冷凍機メーカー、Thermo King社のMagnumはマイナス35℃を維持できます。脂肪分の多い鮮魚、アイスクリームなどはマイナス35℃で輸送すると商品寿命の延ばすことができます。
マグロは超低温のマイナス60℃でないと品質を維持できないために船上で冷凍して、冷凍船(リーファーボート)に転載して輸送するか、航空機で冷蔵輸送していましたが、Maerskは冷凍ユニットを2段階に強化して、マイナス60℃の維持が可能な冷凍ユニットを搭載したSuper Freezerを開発し、マグロのコンテナ輸送を可能にしました。
重量物のコンテナ輸送
重量貨物とは、1個あたりの重量が一定の基準を超える貨物をいいます。コンテナの最大積載荷重を超えている重量物や長すぎて1本のコンテナに入りきらない長尺貨物は従来は在来船に積まれていましたが、ほとんどの航路がコンテナ化された現在では、プラント部品や大型車両など専用船でなければ、運べない特殊な物を除き、大型機械、パイプ、車両などは特殊コンテナで運ばれています。
重量物はコンテナのドアから積み込むことはできないので、ドライコンテナの天井と側面を取り払ったフラットラックが使用されています。フラットラックコンテナは重量使用として使用されることが多いため、床の高さが20’コンテナで30センチ、40’で60センチと厚くし、強度が高められています。フラットラックコンテナで積みきれない特殊重量貨物はコンテナ船に直接積み込み、船倉内に並べて、積み付けます。船倉なに入りきれないほど大きな貨物や、レジャーボートなど水に漏れても問題ないような積み荷はオンデッキ(甲板上)に直接、据え付けられます。船倉内に積み込む場合は、コンテナ数本分のスペースにフラットラックコンテナやオープントップコンテナを並べて、その上に積み付けます。
定期輸送では一定基準を超える重量貨物の積み付け、荷揚げにはクレーンの手配、特殊船の投入、荷役時間の延長、割増荷役費用の上乗せなど、特殊な手配や費用を要するほか、船内にブロークンスペース(物理的に貨物が積めない無駄なスペース)が生じるなど、積載貨物が制限されるので、重量貨物割増料金が徴収されます。
かさ高重量貨物のコンテナ輸送
フラットラックコンテナでも積めない、大きくて重量のある貨物は直接本船に積み付けられます。船倉内に入れられない貨物はオンデッキ積み(甲板積み)するが、船倉積みの場合は上から2段目または3段目にフラットラックコンテナを数本並べて、荷重を分散して、ラッシング(動かないようにワイヤーなどで固定)。この場合の運賃はデッドスペースになった分も負担して、さらに荷役経費がフローティングクレーンを使用するため通常よりも割高になります。
コンテナ以外の重量物輸送
オープントップやフラットラックなどのコンテナを並べても対応できない重量貨物や大型貨物には以下の荷役方式が用いられます。
Lift on/Lift off(Lo/Lo)方式
垂直クレーンで吊り上げて、貨物を積み下ろしする方式で、重量物ではもっとも一般的です。重量物運搬船に自装したヘビーデリック(大型クレーン)あるいは海側からフローティングクレーンを使って荷役します。
Roll on / Roll off(Ro/Ro)方式
自走可能な貨物が自走して船内に乗り込みます。または荷下しの時はその逆の水平荷役方式。このような荷役のために船首、船尾、あるいは船側に開口ランプウェイ(荷積み・荷降ろしのための斜路)を備えた船をRo/Roといいます。
Float on / Float off(FO/FO方式)
バラストタンクへの注水・排水によって本船の上甲板のレベルを水面下まで下げ、水上に浮かべた貨物を本船に引き入れる方式